「制服まにあ」の独り言(2)

<99.03.30>

 制服系同人イベント「りりかるたいむ」に参加して、改めて思いました。

 今、ひそかなブームの制服系。では、「制服同人」って、何だろう。制服同人誌の表現の限界って、どこにあるんだろう。制服同人の終着駅って?

 同人作家がプロ化すると、たとえば漫画家なりイラストレーターになります。同人ソフトであれぱ、ゲーム業界に就職したり、CG作家になったりといった道があるでしょう。そして、その両者の間に行き来していても、大抵のばあい、黙認されるというか、「同人屋だったくせにプロ漫画家になって汚い」といわれることもなければ、「プロのくせにアマチュアの同人業界を侵食するな」みたいなこともいわれません(笑)
 では、制服同人をやっている人は、どういう形でより次のレベルに向かったら良いのでしょう?(これは、コスプレ彼岸シリーズの「コスプレイヤーはどうすればプロになれるか」という命題と似ていますが…)

 ある意味、森伸之氏は、制服同人の行くべき先の見本になっている気もします。彼の観察の成果は「制服図鑑」として単行本になっていますし、傾向の似た仕事(ファミレスやOLなど別のジャンルの制服のイラストなりコメントなり)を商業誌で見かけることもあります。
 では、制服系の衣装が好きで、見るのも着るのも好きで、たとえば、「可愛い制服の見られるお店探索」とか「衣装の入手できるルート調べ」とか「自らが着用」とか、そういう方向で特化してしまった制服マニアは、次にどこに行けば良いのでしょうか…。

 現在、私は、「池袋おいしい制服MAP」の取材のために何万円もの飲食をし、手元には500店舗以上のデータを持っています。これは、けっこう「価値のあるデータ」ではないかと自分では思っています(笑) でも、このデータをこのままの「ざらざらした形」で引きとってくれる商業誌、商業メディアがあるでしょうか?

 飲食店データは、hanakoなどのタウン情報誌に持ち込めるかなとも思ったのですが、逆に、あちらはもっとたくさんのデータを持っているはずでしょうし、仮にこちらのほうがデータ量が多かったとしても、店に許可をとって掲載に「うん」と言ってくれなければ、それで終わり、せっかくのデータも宝の持ち腐れです。同人誌なら、口コミの延長という解釈で無断で書けてしまう内容も、商業誌だったら勝手は許されないのです。
 制服中心の飲食店データで本を出すことに価値があると感じてくださる出版社があればラッキーだし、これについては、一応営業努力(?)はしてみる予定ですが、掲載先のお店がそれを許してくれるのかみたいな話になると、商業レベルで実現させるのには、まだいくつかのハードルがありそうです。(少なくても、大和実業はなかなか難しいと思います。それだけでバニーはもうNGですよね?(笑))

 衣装の入手できるルートについても、知っていても迂闊なことが言えないのが現状です。どこの制服メーカーだって、お店にロットで納入するために衣装を作っているのであって、「あの有名店と同じ服が欲しいから」という理由で、得体の知れない個人に衣装を買われていくのは嫌なんです。1着でも売れたほうがいい…という考えで販売してくれるメーカーもありますが、衣装を購入した側のお店(つまり業者にとってはお得意様)にとっては、自分のところの従業員でもない人が自分のところと同じ衣装を着用できる状態は好ましくなくて当然です。納入したお店との信頼関係を大切にする業者であればあるほど、不用意に同じ衣装を流出させたくないと思うはずです。(もっとも、大手業者で黙っていても量産商品複数の異なる店舗でダブるのはやむを得ないぐらいの販売力を持っているところだと、逆にそういうことは気にしていない傾向にありますが…)
 となると、せっかく、お宝制服を取り寄せできるルートを持っていても、そのルートを自らの手で壊したくなければ、入手できる事実を公表することはできるだけ避け、言うにしてもオブラートに何重にもくるんで…という、これまた不思議なハマりに陥ってしまうのです(苦笑)

 また、自ら着用についても、「コスプレアイドル」みたいなものもなくはありませんが、きちんと芸能活動だけで生活できている話はあまり聞きません。また、多少でも仕事として活躍できている方には、大抵しっかりと営業やマネジメントができる、いわば「業界通」がバックについています。コスプレアイドルについては、本人の資質というよりは、むしろ周囲の力というもののほうが重要なようにも感じます。
 もとより、私の場合は、アイドル云々言えるような容姿でもないし、そういう方向で制服にアプローチしているのとはちょっと違うんで、今の活動の延長線に「コスプレアイドル」的なものを据えるのは、どちらにしても方向性が違うような気がします。

 なんで、いきなりこういったコアな話をしているかというと、例の「制服本」なんです。
 りりかるで暫定版を出してみて、さて、では、次にどういう方向で肉付けしようかとなると、どれもこれも難しい。なまじ業界を知らなかった頃の私は、「アンミラの制服を解体して、型紙を載せたらウケるだろう」とか馬鹿なことを考えたのですが、本当に素人って無知ゆえに恐ろしいことを考えられるものだと、今考えるとヒヤヒヤものです。だって、それって「パターンの盗用販売」ってことになっちゃいます。知らなかったときは無責任にやれたかも知れないけど、オトナの社会を知れば知るほど出来なくなってしまうことって、たくさんあります。
 お店の女の子をナンパして、制服写真を撮らせてもらってそれを掲載とかも、やればできると思います。なんなら、うちの女の子をバイトで潜り込ませてとかも…。でも、それもなんというか、商道徳的にNGっぽい気がするんですよね。お店のお客さんが「こういう制服の店でかわいかった」と同人誌に書く分にはセーフだし、潜入した個人が日記的に自分のお店の体験記を書くのもまぁOK。だけど、出版のために戦略的にバイトを潜り込ませて(あるいは働いている女の子を見つけ出して)各店データを一気記述では、やっぱりやりすぎというかトラブルの種のような気がします。
 おすすめメニューの紹介や、営業時間や場所の紹介なども方法論としてはありますが、そういうライトな(店にとって宣伝的で容認されやすい)データは、すでに各種商業誌に出ているし、いまさら同人としてやる話かなぁ…やったところで、店に正式取材を入れている雑誌の二番煎じになってしまうだけではないかなぁといった懸念もあります。

 そんなことをつらつらと考えるに、「制服好き」な人たちは漫画好きな人に比べて「先の表現が行き詰まっている」世界にいるなぁと感じます。
 漫画を読むのが好き→自分も描いてみたいと思う→落書き程度に練習する→ 同人誌にしてみる→投稿などをする→うまくいくと漫画家デビュー。こういった流れのある漫画系に比べ、制服オタクはどうでしょう?
 可愛い制服の店が好き→自分もバイトをする。極論すれば、これで完結してしまうのです。バイトできない身分(男性である、年齢制限がいっている、場所が遠いなど)の人間は、せいぜいが店に迷惑をかけない程度の内容で紹介めいた制服本を作る程度。あとは、制服好きを極めるなら制服業者になるぐらいしか「商業デビュー」(?)の道はないのです。
 因幡の場合、いちおう「制服業者」になることを想定した動きもしています。しかし、これと同人を両立するのは、めちゃくちゃ難しいというか背反してしまうことが多くて、正直な話、難儀しています。漫画家と同人作家を平行していても背反しないどころか「どっちもよろしくね☆」ですむのに、「制服マニア」と「制服販売業」は、どっちも制服好きということでひとつよろしく…という感じにはスンナリいかない(笑)

 話がちょっとそれちゃうけど、今、コスプレ系のCD−ROMの出演のお話がきていて、おそらくうさぎハウスの娘数名がバニーで登場することになると思うんだけど、これなんかぶっちゃけた話、出版元にとっては、うさぎハウスがバニー衣装にどういうこだわりをもっているかなんてお構いなしで、ともかく「本物の素人」(という言葉も妙だけど(笑))がバニーで出演してくれるというビジュアル的な効果を重視していると思うんですよ。研究系の同人誌を作っているサークルであることとか、その衣装の入手までにどういう紆余曲折があって、どういう思い入れをもってK企画の衣装の開発が進んでいったかとか、そういう部分は「ビジュアル」にとっては不必要なノイズで、むしろ、着る女性の容姿が端麗であるかのほうがよほど重要となってくるのが現実なわけです。
 そういったメディアへの出演がうさぎハウスにとって「適切な」なのかと問われれば、100%でYESとは言えません。でも、うさぎハウスにとって悪い話ではないと思います。というよりも、そういうったせっかくのチャンスを「イメージと合わない」「ポリシーに反する」などと意地を張るのは、自らメジャー化する道筋とせっかくの収入源と宣伝源を同時放棄する後ろ向きな行動だとも言えるのです。脱いでくださいとか、セクシー系として無茶なポーズをしてくださいといった話ではなく、あくまでも「うさぎハウスとして自由にやって良いけど、出演者にモデルとしてのギャラはでます」という話です。出演の方向がビジュアル重視だったとしても、それにケチをつけすぎるのは得策でないと思いました。

 何を言いたかったかというと、あまりジャンルとかこだわりを表に出して、チャンスを狭めなくてもいいんぢゃないかなということです。自分のこだわりは譲れないから、わかってくれる人だけわかってくれればいい、では、もともとが「共通」の部分が少ない狭い制服業界においては、どんどん友達を減らしてしまうような気がします。制服が好きという「好き」の部分は、前回ここでも語った通り人によってかなり差があるので、自分の好きに完全に合う形を探していると、もしかすると1人も残らない危険があるんですよ(笑) 人を自分に合わせてもらうのではなく、人の好きにも呼応することで、結果として自分の好きをわかってもらう手法もあるかなぁと…。

 たとえばAさんにとって「アンミラに行ってゆっくりお茶をする、そのときの全体的な雰囲気が好き」だったとして、それを伝えたくてアンミラ同人誌を作っていたとします。で、その同人誌の読者から「アンミラのスカートにはどちらの側にポケットがついているんですか?」のような服飾的な質問をされたとしても、「うちは、制服構造研究本ぢゃないのに、そんなこと聞かないでくれ!」などとは言わず、知っていることで答えて構わない内容なら答えてあげればいいんぢゃないかなぁ〜?…と。聞いた側からすれば「このサークルならアンミラのことを良く知っている」と評価したからこそ聞いてみたわけで、それは名誉なことと捉えていいと思います。
 また、Bさんは「ベーカリー&洋菓子系で本を作っている」とします。Bさんにとってはお嬢様っぽく大人しいイメージの制服だからそういう店が好きで、他の店には実はそれほど興味はないとしても、もし、読者さんがミニスカが可愛いファミレスの話をしてきたときは、広義の制服系として、答えられる範囲で話をすればいいと思うんです。同じくBさんが、もし出版社の目にとまって、「ファミレス特集をやるから、制服描いてくれないか?」と頼まれたら、それはそれでやっても構わないと思うんです。
 ちょっと説明が下手だけど、つまり、全部自分の思うことや表現していることとマッチングしなくても、結果として、似たジャンルで自分のところに質問してきたり、似たジャンルで別のことをやって欲しいという要求があった場合は、しきい値をあまり高くせずに、できるだけOPENに受けていいんぢゃないかなぁ…と。そうしていくことが、結果として「制服系」というマイナージャンル全体の底上げになり、底上げをしないことには、自分の傾倒しているもっとマイナーなもの(うさぎハウスだったらバニー)が日の目を見ないという構造になっているんですよね(笑)

 同人でなければならない。
 マンガやイラストでなければならない。
 制服本は、お客という視点で描かなければならない。
 趣味を仕事にしてはならない。
 同人誌は、絵柄がうまくなければ価値がない。

 そういった「ねばならない」を「大切なこだわり」だと思っている方がたくさんいます。かつての私もそうでしたし、今でも私の周囲にはそういう方達が結構します。
 もちろん、こだわりは大切だと思います。でも、こだわりのせいで自分のやれることを自分で縛ってしまって活躍の道が狭くなったり、他のジャンルの人と反目したり苦手意識を持たれたり、やれることが限られて結局自分がつらくなってしまったり、困ることもあります。
 自分のメインはこれで、どうしてもここは絶対に譲れないってところはあるけど、それ以外はできるだけおおらかに譲っちゃおう☆…って感じで、色々なジャンルや考えの人と接触してみていいんんぢゃないかな?

 最近の因幡は無節操に見えるかもしれないけど、意外と確信犯だったりする部分もあったりします(笑)


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